ふるきのガベージコレクション2

脳内を通り過ぎたイメージの残骸の記録

読書

ダロウェイ夫人 バージニア・ウルフ

100分de名著のパンデミック特集の回で、パンデミック後のロンドンの描写があると紹介されていた本。でも、実際はほとんどなくて、独特の構成の方がずっと印象的だった。 1923年6月のある一日を、沢山の登場人物の一人語りを積み重ねて作り上げている。不思議…

昨日の夕方の空

昨日の夕方の散歩の途中で、珍しい空をみた。

氏名の誕生 --江戸時代の名前はなぜ消えたのか 尾脇秀和

江戸時代の人名の仕組みの解説と、それが明治維新の数年間でどのように変化して、現在の氏名という仕組みに移行したかを解説した本。 広く普及した仕組みを、権力を得た朝廷勢力が王政復古の観点から次々と変更し、その矛盾に耐えられずに変更を続けていく様…

浮遊霊ブラジル 津村記久子

2022.02.26読了 Webちくまで"苦手から始める作文教室"を連載している著者の本を読んでみたくて選んだ本。静かな情景、働く女性、いじめの後日譚、現代的な地獄、ものを頼まれやすい人、高次機能障害、幽霊話の7編の多様な短編小説がまとめられている。かなり…

BBC Cultureでフィリップ・K・ディックの記事

ブックマークサービスPocketのHome[BETA]というボタンを押すと、(残念ながら英文の)記事紹介の画面になるのだが、そこに先日読んだ"高い城の男"の作者であるフィリップ・K・ディックについてのBBC Cultureの特集記事が出ていた。2022.03.02の新しい記事。 い…

都市と星 アーサー・C・クラーク

100分de名著のアーサー・C・クラーク スペシャルの回で紹介されていた本なのだが、この本を紹介した放送日の録画を忘れて知識なしで読むことになった。 いくつかの小説を継ぎ接ぎしたような違和感を感じる作品だったので調べてみたら、一旦発表された作品を…

高い城の男 フィリップ・K・ディック

第2次対戦が枢軸国側の勝利で終結した1960年代を世界を描く小説。60年経過した今でも古さを感じさせないものだった。まあ、1960年代の話なのだから当たり前かもしれないが。そういう世界に生まれたら自分はどうかを考えてみるが、話が大きすぎて実感がわかな…

スコーレNo.4 宮下奈都

地元出身の小説家として、タウン誌などでエッセイを読んだりしていたが、小説も読んでみたくなって買った本。 デビュー作なのだが、おそらくもっと長い小説だったものをザクザク切り貼りして短縮したような感じのある読後感で、もっと読みたい感じが残った。…

ルポ百田尚樹現象 ~愛国ポピュリズムの現在地~ 石戸諭

苦手なタイプなのだが、人気がある理由を知りたくて読んでみた本。一般的に考えられている評価軸とは違う物差しで評価されているという言われてみれば当たり前の内容だった。 ・感動させることが最優先・イデオロギーは作品によって着脱できる・知性ではなく…

電子書籍か紙の本か

最近は、基本的に電子書籍を買うことにして、電子書籍が選べない場合のみ紙の本を買うようにしていた。 ・保管場所を取らない・文字サイズが調整できる などの利点があるから。 と思い込んでいたが、重要な理由がもうひとつあった。それはKindleデバイスが軽…

断片的なものの社会学 岸正彦

100分de名著 ディスタンクシオンの案内役として知った著者の社会学に関するエッセイ集。 読み始めてすぐに気づくのは、静かさ。若い頃に読んだエッセイにはこういう静かさを感じるものが多かった。Web以後の文化としてわかりやすくていねいでないとダメな風…

ハーモニー 伊藤計劃

なぜかSFは古典(といっても1960-1970年代だが)ばかりを読んでいて最近の作品を読んでいないことに気付いて、お試しとしてどこかのおすすめの中から選んだ本。 ユートピアのようなディストピアのような近未来を描く不思議な作品だった。作中の重要な前提条件…

城の崎にて、小僧の神様 志賀直哉

若いころに文庫で何度も読んでいるのだが、また読みたくなった。 中学1年の夏休みに、国語が弱いですねとの先生の指摘で問題集をたくさんやったのだが、その中のいくつかの問題が"城崎にて"を題材にしたものだった。死んだ蜂と生きている自分との対比という…

今夜、すべてのバーで 中島らも

Amazonのセールで慌てて選んだ数冊のうちの1冊。著者のアルコール依存症体験をもとにした、一種の啓蒙小説だと思う。 小説の中で語られる知識は多岐に渡り、病人が一番、病気を知っていることを再認識させてくれる。でも、知っていてもそれが実行できるとは…

ペスト アルベール・カミュ

新型コロナウイルスのパンデミックが始まってしばらくして、先人の知恵が得られないかと読み始めた。 読んですぐわかるのは、ペストが社会に与えた影響が新型コロナウイルスと比べて格段に大きいということ。若者、子供もどんどん死んでいく状況にあったら、…

人新世の資本論 斎藤幸平

100分de名著の資本論の回の案内役だった斎藤さんの著書として読んでみた本。 地球環境危機を乗り越えるには、現在の緩やかな変化(SDG'sなど)では間に合わず、経済、社会のすべてを劇的に変える必要がある点を解説し、その解決策としてマルクスの資本論の新し…

JR上野駅公園口 柳美里

柳美里の本を読んでみたいと考えていたところへ、全米図書賞受賞とのニュースがタイムラインに流れてきて、この機会に読んでみることにした。 福島県出身のホームレス男性の今と来し方と終末の瞬間までを回想シーンを積み重ねて書かれている。 自分にとって…

日の名残り カズオ・イシグロ

ずいぶん前に"わたしを離さないで"を読んでいて、もう1冊読んでみたくなって選んだのがこの本。ブッカー賞受賞という安全パイを狙った選択。 イギリスの名家に長く仕えた優秀な老執事が、昔の同僚の女性を尋ねる旅の途中に来し方を振り返るひとり語りをする…

ある男 平野啓一郎

100分de名著の"金閣寺"の回の案内役として平野さんを知り、どんな本を書く人なのかを知りたくて読んだ本。別の人間に成りすました男が本当は誰なのかを追う弁護士の話で、ジャンルとしては推理小説なのだろう。 自分にとってのこのジャンルの小説は、小説の…

カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー

10年ほど前に新潮文庫版で読んだのだが、こういう意味でこういう結末なんだろうなというぼんやりした読後感でもやもやしていた。 先日、NHKの"100分de名著"の再放送があって、新訳版を出しているロシア文学者の先生の解説の中で、ドストエフスキーの父親が殺…

サピエンス全史 ユヴァル・ノア・ハラリ

どんな本? 人類社会を新しい観点でとらえた歴史書 ・人間は、認知革命の結果、言語を手に入れ、想像上の存在(虚構)を語ることができるようになったおかげで、共同幻想を持つことが可能になり、それが国家や貨幣や宗教、それ以外の様々な思想の前提条件にな…

上を向いてアルコール 小田島隆

どんな本? コラムニスト小田島隆さんが30代に経験したアルコール依存症体験についての本。 自分もアルコール依存症の入口に立ったことがある。大学時代は、飲むために飲んでいて、 ほぼ毎日飲んで、週に1回ぐらいは記憶がなくなるぐらいに飲んでいた。絶対…