どんな本?
コラムニスト小田島隆さんが30代に経験したアルコール依存症体験についての本。
自分もアルコール依存症の入口に立ったことがある。大学時代は、飲むために飲んでいて、 ほぼ毎日飲んで、週に1回ぐらいは記憶がなくなるぐらいに飲んでいた。絶対量は大したことはないのだが、酒に弱かったので、”楽しいが終わりは地獄”な飲み方になっていた。
それまでに読んできた小説や漫画やエッセイや広告が酒の魅力を語っていて、その世界にあこがれていたのだと思う。酔っ払いを言い訳にした別人格的な行動も、内向的な自分には魅力だったのだろう。
たが、就職すると逸脱できる幅がぐんと狭くなる。明日のことを考えるのは当然だが、仕事が滅茶苦茶に忙しかったので、貴重な週末を二日酔いで過ごす損失も大きい。仕事の付き合い以外では飲むことがなくなり、危険な領域から脱することができた。
結局は四十代になって、酒をやめた。一切、飲まなくなった。酒の席の逸脱も、若い世代の逸脱にはついていけなくなり、小さな逸脱しか得られなくなる。こうして得られる小さな快感と、二日酔いの苦しみと費用とを精算してみると、明らかに大赤字になっている。同時にいわゆるステマ的なものに敏感になった時期で、酒に関するいろいろなものの広告性に気付いたことも影響している。
記憶がなくなるような薬物を、伝統を理由に認めている社会はどうかしている。20年後、WHOの最大の活動対象が酒になっているかもしれない。
2019.01.24読了