ふるきのガベージコレクション2

脳内を通り過ぎたイメージの残骸の記録

日の名残り カズオ・イシグロ

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

ずいぶん前に"わたしを離さないで"を読んでいて、もう1冊読んでみたくなって選んだのがこの本。ブッカー賞受賞という安全パイを狙った選択。

イギリスの名家に長く仕えた優秀な老執事が、昔の同僚の女性を尋ねる旅の途中に来し方を振り返るひとり語りをするという設定で、貴族が外交面で活躍していたイギリス栄光の時代の、執事の仕事の内容と心構えなどが語られる。

でも、あくまでひとり語りなので、語りたいことだけが語られているはず。少し悪趣味かもしれないが、語られなかったことを聞いてみたくなる。語らなかったことの中にその人の本質が隠れているような気もする。

自分も先が見えてくる年齢になって、何を語って、何を語らず、また、何を忘れてしまっているのかという、記憶の棚卸し的なものをする時期が来ているのかもといったことを考えた。