ふるきのガベージコレクション2

脳内を通り過ぎたイメージの残骸の記録

人新世の資本論 斎藤幸平

人新世の「資本論」 (集英社新書)

100分de名著の資本論の回の案内役だった斎藤さんの著書として読んでみた本。

地球環境危機を乗り越えるには、現在の緩やかな変化(SDG'sなど)では間に合わず、経済、社会のすべてを劇的に変える必要がある点を解説し、その解決策としてマルクス資本論の新しい解釈をもとに、新しい社会主義の導入を主張する本。

世界中で資本論の再評価が、特に若い世代を中心に盛上がっているらしい。確かに資本論で語られる当時の社会の描写は今の状況を予言しているといってもよいほど似ていて、予言書的な評価を受けているのだろうと思う。

でも、旧ソ連、中国が社会主義による国家運営に失敗したと同時に、革命国家、全体主義国家として人権を抑圧していることから社会主義全体主義が一体で語られるる状況下では、その悪い評価を覆すことは難しいだろう。なぜ、別の名前の"新しい革袋"を準備しないのだろうと思う。理論は正しいのかもしれないが、方法としては間違っているように感じる。

環境問題の解決は、全体主義国家群と民主主義国家群との競争、すなわち冷戦の中でしか実現しないと考えている。第2次世界大戦後の復興と経済繁栄が得られたのは、冷戦というどちらの体制が優れるかの競争の成果だった。同じように地球環境問題が深刻化するほど、その分野での競争が激化し、解決を加速していくという期待。この観点で"新冷戦"が始まったのは必然だし、希望の光なのかもと少し期待している。