ふるきのガベージコレクション2

脳内を通り過ぎたイメージの残骸の記録

ダロウェイ夫人 バージニア・ウルフ

100分de名著のパンデミック特集の回で、パンデミック後のロンドンの描写があると紹介されていた本。でも、実際はほとんどなくて、独特の構成の方がずっと印象的だった。

1923年6月のある一日を、沢山の登場人物の一人語りを積み重ねて作り上げている。不思議な文体で段落の切替えはあるものの、突然次々と話者が変わる点は最初は戸惑うが、慣れてくると多角的な人物像の表現には向いているのかなと感じた。複雑な構成を取っているためか、個別の文章が読みやすく書かれていて、あっという間に読み切ることができたのも特徴かもしれない。こういう当たり前の人生的な物語は好きなのだが、起承転結を求める人には物足りない本なのだろうなと思う。

この本を買うときに電子版のある"古典新訳文庫"版と電子版のない集英社文庫版とどちらにするか迷ったが、古典新訳文庫版にはダロウェイ夫人の年齢に見合わない表現についてのコメントがあったため、久しぶりに紙の文庫を読んだ。しばらく前に考えたように紙の本も当たり前に良いのだが、圧倒的によいわけではないなという印象。次は電子書籍でメモとハイライトを積極的に使ったらどうなるかを試してみようと思う。