ふるきのガベージコレクション2

脳内を通り過ぎたイメージの残骸の記録

前立腺がん精密検査へ

5月の健康診断の結果が返ってきた。前立腺がんマーカーPSAの値は一気に15.7まで上昇してしまった。昨年は7.5、8月のかかりつけ医での再検査では10.75。10以下では大病院は動いてくれないが、10を越えたらがんの可能性が高まって対応が変わるという話はあったが、まだ10を越えたばかりだし、また、勤務先の健康管理室からの督促もなかったため放置した。でも、今年は数値が大きく10を越え、健康管理室からも督促が来ていたため、観念してかかりつけ医に紹介状を書いてもらって精密検査の予約をした。

それと同時期に腰や足の関節が痛む状態が、突然始まった。体を曲げて体重をかけると痛むというのが基本的な症状で、股関節など何もしなくても軽い痛みがある場所もある。またどこが痛むかが毎日変化して普通の腰痛などとは明らかに違う。その症状は、骨がんの症状の記事にそのままきっちりあてはまって不気味。というか、前立腺がんが悪化して骨に転移したという推定が確信に変わりつつあった。

精密検査はPSAの再検査や触診、直腸経由のエコーが基本。その次の段階がMRIや生検。生検は感染症などのリスクがあるため避けたいところだが、がんの進行段階を見るには必須の検査。当初は生検は断固拒否の方針だったのだが、関節の痛みが出て骨がんの疑いが出てきている状況では受入れる方向に気持ちが傾く。これから始まるであろう長い闘病生活を思うと、生検は些細なイベントになるような気がしていた。

ところが、翌日になって、紹介状を書いてもらったクリニックで、(K)が「PSAがもっと悪くならないと転移はしない」という話を聞いてきた。その後しばらくして腰骨や股関節の痛みが大幅に低減し、あの痛みはストレスに起因するものだったと思わせる状況に。痛みがなくなると、がんではない可能性が高まったような気になって、やはり生検は断固拒否でがんばろうかという気分に。

転移しないがんならば、前立腺がん単独では命にかかわる状況までは至らないだろうから、がんと共存することになる。この場合は前立腺全摘手術はあまり意味がない。一方、転移するがんの場合に転移が始まる前、あるいは転移が小規模な間に全摘手術をすることで将来の本格的な転移を阻止するのが目的なのだろう。目的はわかるが、結果として排尿障害が10~30%という影響は重大で、簡単に選択できるものではない。

ここからはこれまでの前立腺がんの増加の経緯が問題になる。最近になってこのがんが急増しているのはPSA検査の普及が原因であることは明らかだろう。食生活の変化を理由に挙げている説明もあるが、この20年間の変化はそれほど大きいようには思えない。PSA検査以前はがんが発生していても誰も気づかずに死んでいたということ。ほとんどの場合は転移せずにがんではない病気で死んできたのだと思う。可能性としては前立腺がんから他の臓器に転移してそこでのがんで死亡していた可能性が残るが、がんが発生すると全身への転移状況を検査するのだから、前立腺がんも発見され、それが原発がんである可能性を調査されたはずで、その絶対数が多いのならば、前立腺がんの発生を阻止する医療活動がもっと盛んになったはず。それが起きていないことからすると、そういう事実はないのだろう。やはり前立腺がんは転移しにくいがんであり、積極的な治療をせずに共存することが最適な選択肢に思えてくる。それでも転移が起きてしまったとしても、がんで死ぬという状況を受入れることは自分にとっては可能だと思う。そもそも、前立腺がんからの転移以外でいつどこにがんが発生するのかは全く予想もできないのだからそれと同じと考える。

そうであるならば、前立腺全摘による治療は自分にとっては意味がなくなる。前立腺がんが転移しないタイプであることに期待し、もしそうではなくても他の部位で原発として発生したがんと同様に受入れる。おそらく高くはない転移リスクが顕在化したからと言って、軽くはない排尿障害リスクを受入れるのはバランスが悪いと考える。これまでぼんやり考えていて、頭の整理ができていなかったが、ここで言語化できてすっきりした。なお、上記は全摘手術について書いているが、放射線治療も同様。

まだ、生検を受けるかという問題は残っている。がんであるかどうか、転移が始まっているかの判断のための検査。がんであるかどうかは、おそらく薬物療法の方針に影響するし、転移があるなら全身の状況を調査することになる。薬物療法の知識は不足しているので、何がどう違うのかは聞いてみるしかなさそう。転移の有無の検査は上記の考えからすると、転移先のがんの発見が目的ということ。でも、転移が発生しているということは、その部位だけで収まるわけもなく、多発がん状態に陥ってどうしようもなくなる状況になるのだろう。そうだとすると探さなくても次々問題が起きてくるだろうから検査の意味は薄い。でも、転移先のがんが早期発見できれば軽く済ませることができるのかもしれないので、どんながんが見つかるのかによって判断が分かれるのかもしれない。