江戸時代の人名の仕組みの解説と、それが明治維新の数年間でどのように変化して、現在の氏名という仕組みに移行したかを解説した本。
広く普及した仕組みを、権力を得た朝廷勢力が王政復古の観点から次々と変更し、その矛盾に耐えられずに変更を続けていく様子が面白く描かれている。
副産物的な知識だが、数か月単位で方針が変わっていくペースはまさに朝礼暮改で、政治のスピード感とかいう人たちはこういう不安定な世界を求めているのだなと理解できた。
また、論争に巻き込まれるのを避けたのか、夫婦別姓が明治以後の100年ほどの伝統でしかないことをエピローグの中に小さくまとめいる。名前の仕組み自体が古代、中世、近世、現代と変化していて、どの時代が正しいわけでもなく、それぞれの時代に正しさがあっただけで、歴史上の"正しさ"の議論に意味がないことも述べられている。
日本以外の国々の名前の歴史についても読んでみたくなった。