ふるきのガベージコレクション2

脳内を通り過ぎたイメージの残骸の記録

読書

汝、星のごとく 凪良ゆう

本屋大賞1位の作品を買ってみた。基本は恋愛と人の成長の話なのだが、社会問題も盛り込まれたお腹一杯になる小説だった。作品とは関係ないのだが、複雑なものが読めない状況が続いているにもかかわらず、この本もすんなり頭に入ってきて、自分としてはかなり…

街とその不確かな壁 村上春樹

内容についての情報を全く持たずに読み始めたら、何となく既視感のある内容に戸惑った。"世界の終りとハードボイルドワンダーランド"に似ている。内容はあまり覚えていないのだが、似ていることだけはわかった。Kindleで読んでいたため最後まで気付かなかっ…

同志少女よ、敵を撃て 逢坂冬馬

独ソ戦で家族を殺され村を焼かれた少女が、狙撃兵として成長していく物語を描いた小説。とにかくぐいぐい引き込まれていく物語と描写に圧倒された。普通の小説では中断して再開する時には再び物語に入っていく時に若干のタイムラグがあるのだが、この小説は…

青年 森鴎外

青空文庫アプリで読んだ。夏目漱石の三四郎が発表されたのを受けて書かれた小説。上京してきた青年の最初の2か月間の小事件の連なりが、坂井未亡人との関係を軸につづられている。登場人物の会話や独白にフランス語の単語が混ぜて微妙なニュアンスを伝えよう…

遠い太鼓 村上春樹

1980年代後半に著者がギリシャ、イタリアに滞在して3年間を過した生活記録をエッセイとしてまとめた本。バブル前夜のこの時期、海外旅行は当たり前のものになり、その基礎情報としての滞在記には人気があった。海外ならではの様々な小事件が起きてその解決に…

辺境の思想 日本と香港から考える 福嶋亮大、張彧暋

昔、読んだ本のメモ。香港と日本を、中国と西洋に対する2重の辺境と位置付けて、サブカルチャーをベースにした辺境論についての書簡形式の対談。主題とはずれるが、 -- 宗教は無駄死にへの救済 -- ナショナリズムは、宗教の衰退を受けてその役割を引き継いだ…

イスラームという生き方

NHKラジオ 宗教の時間のテキスト、上下2巻。番組は見ていない。イスラム国の問題が最も悪化していた時期に読んだ本。その時期に書かれた訳ではないが、イスラム教徒がいかに穏やかに暮らしているかを強調する内容で、普通のイスラム教徒を恐れる必要はないこ…

ネット右翼になった父 鈴木大介

ネット右翼になった父 (講談社現代新書)作者:鈴木大介講談社Amazon晩年にネット右翼的な言動をし始めた老いた父親に反発していた著者が、父親の死後に本当にネット右翼になっていたかの検証をした結果をまとめた本。家族がネット右翼になるという状況が刺激…

図書館、本屋で本が選べない理由2

昨日は本が選べないのは加齢によるものかという話を書いたが、別の原因を思いついた。事前情報なしに本が選べなくなっているのではないかということ。物理的な本を見ても背表紙には題名と著者ぐらいしか情報がなく、平置きでも帯のコメントまで。読書欄や読…

久しぶりの図書館

昨日は良い天気だったので、散歩がてら図書館へ行ってきた。30分弱の道行は風がやや強かったものの冷たさは感じない春の風で、田んぼの中の一本道や図書館の敷地の都市公園のような小道を気持ちよく歩いた。図書館の内部は書架はあまり変わっていなかったが…

ザリガニの鳴くところ(ネタばれ版)

ネタばれ版も書いてみる。最後の最後で貝の首飾りが見つかり、誰が殺したのかがわかった。となると裁判や無罪評決後の行動も殺人者として読み返さねばならない。裁判では私はやっていないという主張はしていないし、現実逃避的な行動を繰返していたので、辻…

ザリガニの鳴くところ ディーリア オーエンズ

2023.01.06読了Amazonの半額セールでアメリカのベストセラーとして紹介されていた本。基本的には推理小説なのだと思うが、濃密な自然描写や息詰まる裁判のシーン、孤独な少女の生活と成長など多彩な内容が含まれている。電子書籍で読んだが、紙の本は500ペー…

プロジェクト ヘイルメアリー アンディ・ウィアー

2022.12.24読了ある生物が太陽系に侵入したことによる気候の大変動の原因を宇宙船に乗って調査に行く話。前半は孤独、後半は予想外の共同作業がテーマになっている。孤独な調査で思い出したのは、機械の不具合調査の海外出張。カメラとノギスと拡大鏡程度の…

だから、もう眠らせてほしい 西智弘

終末ケア医である著者が、現在の選択肢である耐え難い苦痛がある場合の、薬物による鎮静のあるべき姿に悩みつつ、議論が始まりつつある安楽死制度の在り方を識者とのインタビューや患者とのやり取りを通して考えていく本。問題提起までで結論は提示されてい…

人形の家 イプセン

男性主導の社会からの女性の自立の模索を描く戯曲。この本は3回も買ってしまっている。文庫本が1回、電子書籍が2回。それほど面白かったというわけではなく、夏目漱石の小説に出てきて読みたくなって買うというパターンの繰り返し。毎回、読みはじめてすぐに…

大学をウロウロする夢と出身大学の統合

久しぶりに夢を見た。自分の出身大学の建物の中をウロウロしている夢で、卒業直後かしばらくしてからのリクルータか何かで訪問しているようだ。いくつかの建物を出たり入ったりしていて、何の目的なのかがわからないが、図書館に向かっているところで目覚ま…

「色のふしぎ」と不思議な社会 川端裕人

しばらく前に読んだ本なので、やや記憶があいまいだが書いてみる。自分は軽度の色覚異常者だと自認している。前半は、人間がどのように色をみているかという仕組みの話で、興味深い内容、後半は、色覚異常に関する差別の話。主に職業差別の話だが、当事者と…

走ることについて語るときに僕の語ること 村上春樹

走ることをテーマにしたエッセイ集。ボストン在住時代の話が出ていることを知って読んでみたくなった。ボストンには1995年頃に出張で2回、行ったことがある。当時、仕事で担当していたトランスミッションのライセンス生産のライセンス元の工場がボストンの郊…

小さなトロールと大きな洪水 トーベ ヤンソン

僕の世代ではムーミンといえばもじもじするに決まっているのだが、一連の原作のうちのこの第1作では違う。ムーミンママと一緒にムーミンパパを探して冒険しながら成長していく普通の子供として描かれている。そこは違っているのだが、もの寂しい静けさなどは…

ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界 阿部謹也

ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界 (ちくま文庫) 作者:阿部謹也 筑摩書房 Amazon ドイツの伝説である"ハーメルンの笛吹き男"について、ドイツ中世の豊富な知識を背景に説明した本。謎解きに引き込まれていくうちにいつの間にか中世ヨーロッパの暮らしに…

100分de名著「存在と時間」ハイデガー

ハイデガー『存在と時間』 2022年4月 (NHK100分de名著) 作者:戸谷 洋志 NHK出版 Amazon 100分de名著の「存在と時間」を見て、もう少し深堀したくなってテキストを購入。 人間は世人という世間に支配されて生きているが、ある日、死から逃れられないという事…

僕はイエローでホワイトでちょっとブルー ブレディ みかこ

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫) 作者:ブレイディみかこ 新潮社 Amazon イギリス人夫との間に生まれた長男の思春期を見守りながら過ごすイギリスでの生活についてのエッセイ集。日本の集団主義とは違う個人中心の社会のありかたが興…

海辺のカフカ 村上春樹

文庫の初版を買っていいるので17年前に読んだ本の再読。内容はほとんど忘れていて、新鮮な気持ちで読むことになった。 どんどん物語に引き込まれていく勢いが強くて、筋を追いたいがために速読状態に陥ってしまうぐらい。勢いにまかせて読みたい気持ちに負け…

疲れて書けない

ここ数日で、村上春樹の海辺のカフカを読み直していた。今日、読み終わったのだが、あまりに一気に読んだので疲れ果てて記事が書けない状態。 2005年の文庫化の初版を買っているので、17年ぶりに読んだことになる。休職中の時期だったためおそらくはきちんと…

色彩をもたない田崎つくると彼の巡礼の年 村上春樹

高校時代の仲良しグループの後年のトラブルと修復の物語と書いたら粗すぎるかもしれない。でも、ネタバレしないでうまく書く文才はないので、読書のカテゴリでは本の内容はこのぐらいにして、自分が感じたことを書くようにしている。 高校卒業後、最初のころ…

思い出トランプ 向田邦子

思い出トランプ (新潮文庫) 作者:邦子, 向田 新潮社 Amazon ずいぶん前に読んだので、買ったきっかけは思い出せない。昭和のテレビドラマから切り出したような普通の人のちょっと尖ったエピソードが並ぶ短編小説集。 こういう本を読んで、ちょっとした不幸を…

Dockerの本ようやく半分

たった1日で基本が身に付く! Docker/Kubernetes超入門 作者:伊藤 裕一 技術評論社 Amazon Docker/Kubernetes超入門という本を読んでいる。 "たった1日で基本が身につく!"という副題なのだが、ノロノロ読んでいて1か月半が経過。基本編が終わって、これから…

ポトスライムの舟 津村記久子

ポトスライムの舟 (講談社文庫) 作者:津村 記久子 講談社 Amazon 少し前に同じ作家の"浮遊霊ブラジル"を読んだのだが、特殊な短編集のように感じたので芥川賞受賞作を読んでみた。 正直な感想としては芥川賞的な尖った内容ではなくて、至って普通の小説。文…

コーヒーの科学 旦部幸博

2年ぐらい前のコーヒーに凝っていた頃に読んだ本。コーヒーの豆と焙煎と抽出についての科学的な知識がまとめられている。 より美味しく飲むためには理屈を理解したほうが良いはずと考えて読んだのだが、この本を読んでいろいろ試した結果、それ以前にコーヒ…

妻はサバイバー 永田 豊隆

様々な精神疾患を抱えた奥さんとの20年間の闘病記録を新聞記者の夫がまとめた本。4/28までの期間限定でnote上に全文公開されていて、無料で読ませてもらった。新聞記者らしい簡潔で読みやすい文章なので3時間ほどで読み切ってしまった。 とにかく壮絶な病気…