ふるきのガベージコレクション2

脳内を通り過ぎたイメージの残骸の記録

色彩をもたない田崎つくると彼の巡礼の年 村上春樹

高校時代の仲良しグループの後年のトラブルと修復の物語と書いたら粗すぎるかもしれない。でも、ネタバレしないでうまく書く文才はないので、読書のカテゴリでは本の内容はこのぐらいにして、自分が感じたことを書くようにしている。

高校卒業後、最初のころは友人に会いに行ったり、飲み会ををしたりつながりが継続するような感覚がしていたが、時が過ぎるほどより濃厚な大学のサークルや下宿での人間関係が拡大していって高校時代の交友関係は失われていった。同じように大学時代のそれも、職場の若手の盛上がりも消えていった。残っていた年賀状もあと数枚まで減った。今は家族と希薄な職場でのつながりがほぼすべての人間関係になってしまった。

うまくいかなくなる理由は、その時代の自分への恥ずかしさ。あの時代の無知で馬鹿な自分には戻りたくない。コミュニケーション力のある人ならば違う自分として新たに関係を再構築するのだろうけど、自分にはできそうもない。新たに構築できる関係は過去の関係の修復ではなく、今の自分に身近な新しいものだけであるような気がする。

とはいえこの本のような強烈な体験をした人にとっては、過去の関係の修復に向かわざるを得ない。この本で語られるような救いの物語が必要な立場に陥らなかったことは、残ったつながりが寂しいものだけであったとしても、幸せだったのかもなと思う。