ふるきのガベージコレクション2

脳内を通り過ぎたイメージの残骸の記録

だから、もう眠らせてほしい 西智弘

終末ケア医である著者が、現在の選択肢である耐え難い苦痛がある場合の、薬物による鎮静のあるべき姿に悩みつつ、議論が始まりつつある安楽死制度の在り方を識者とのインタビューや患者とのやり取りを通して考えていく本。問題提起までで結論は提示されていない。

(K)はもう十分やりたいことをやってきたので、倒れていたら助けないこと、有効な治療法がなければ延命しないことを望んでいる。何度も話をして気持ちは理解できているし、叶ええてあげたいとは思うが、実際にその場に立った場合には動揺して普通の治療を選択してしまうかもしれないという不安はある。本人がもう十分と思っていることと、家族がもう失っても良いと思う気持ちは全く別の感情なので、本人の意思を優先することができるかという点には自信が持てない。

逆に自分については、もう十分生きたので(K)と同じようにあきらめればよいという感覚があるとともに、残される人が納得するための治療なら多少きつい内容でも受け入れるという考えていた。しかし、先日のワクチンのきつめの副反応で"これから死ぬ感覚"を経験してみると、もう十分生きたという感覚さえ怪しいことに気づいてしまって、この議論はもっと考えてみる必要があることだけはわかったという現在地にいる。